土曜日のロンシャンとアスコット

二日ぶりの競馬日記です。前回チラッと触れたように、昨日は義母の一周忌に参加するため朝から終日名古屋に出張していました。凱旋門賞が始まる時間には帰宅していましたが、往復4時間の新幹線はロートルにはキツイものがあります。ロンシャンからの生中継を見て直ぐに寝てしまいましたワ。
ということで既に凱旋門賞の結果は知っていますが、モノには順序。先ずは前日の土曜日に行われたヨーロッパ競馬からレポートして行きましょう。このあとはアメリカのGⅠオンパレードにも触れなければなりませんから、凱旋門賞はそのあとで、ということになりますか。

土曜日、フランスのロンシャン競馬場は凱旋門フェスティヴァルの前夜祭でしたし、イギリスのアスコット競馬場も今期から変更された新開催が行われました。今回はロンシャンから先に報告していきましょう。
土曜日のロンシャンはGⅡ戦が4鞍、ヨーロッパは季節外れの夏が戻ってきたようで、馬場はこの時期には考えられない good の状態で行われました。レース順に回顧していきます。

競馬祭り第1弾はショードネー賞 Prix Chaudenay (GⅡ、3歳、3000メートル)。10月後半に行われる仏セントレジャーのトライアルに相当するパターン・レースです。
僅か5頭立ての1番人気(イーヴン)にはリステッド戦に連勝、前走ドーヴィルでは同じ3000メートル戦を制したゲイリー・ゲーム Gaily Game が支持されていましたが、逃げたものの最後はバテて5着しんがりと期待を裏切ります。
優勝は18対5のシャンカルデー Shankardeh 。スタートで先頭に立ち、一旦は2番手に控えながら最後で抜け出し、ミス・ラーゴ Miss Lago の追い込みを頭差凌いでの優勝です。3着は更に1馬身でパシフィック Pacifique の順。

勝ったシャンカルデーはアガ・カーンの持ち馬。本番(凱旋門賞のサラフィナ Sarafina)に向けて絶好のスタートを切りました。2連勝した後パターン・レースで3着、2着と着順を上げ、前走はミーズナー Meeznah と良い勝負をしていた馬。
管理するミケール・デルザングル師は、次走にアスコットのプライド・ステークスを挙げながらも、仏セントレジャー出走の公算の方が大きいことも付け加えています。鞍上はクリストフ・ルメール騎手。

続いてはダニエル・ウイルデンシュタイン賞 Prix Daniel Wildenstein (GⅡ、3歳上、1600メートル)。
11頭立て。13対10の1番人気にはGⅠ馬リオ・デ・ラ・プラタ Rio De La Plata が支持を集めていました。

レースはセット・ザ・トレンド Set The Trend とプライヴェート・ジェット Private Jet が強いペースで逃げる展開。5番手に待機した本命馬には絶好の流れになります。
やや早目に先頭に立ったデットーリ騎乗のリオ・デ・ラプラタが勝利を手中にしたと思われた時、最後の50ヤードで内で待機していた57対10のラジサマン Rajsaman の末脚が爆発、短首差で逆転劇を演じました。1馬身差3着はベスト・デーティング Best Dating 。

フレディー・ヘッド厩舎のラジサマンとリオ・デ・ラ・プラタは、前走ムーラン・ド・ロンシャン賞(エクスセレブレーション Excelebration が優勝)で夫々3・2着していた関係。今回は着順が逆転した形です。ラジサマンはムーランがサセックス・ステークス(4頭立て4着)以来のレースでしたから、ここは叩かれ二戦目の利があったとも考えられましょう。GⅡは2勝目、鞍上はティエリー・ジャルネ騎手。
惜しかったのはランフランコ・デットーリ騎手で、ここはパターン・レース500勝目という区切りが掛かっていたのです。先頭に立つのが少し早かったかも知れませんが、大記録は先に延びることになりました。
ヘッド師によれば、ラジサマンは師が好きなタイプだそうで、今年もこのあとは香港遠征を計画している由。

なお、このレースにはフランスで開業している小林智厩舎のキングズ・キャニオン Kings Canyon が田中博康騎手とのコンビで駒を進めてきましたが、最下位11着に敗退。ここでは荷が重かったようです。

GⅡ3戦目はロワイアリュー賞 Prix de Royallieu (GⅡ、3歳上牝、2500メートル)。
ここも僅かに4頭立てという小頭数。9対10の1番人気には重馬場の長距離戦で連続3着しているアガ・カーンのシャマノヴァ Shamanova が選ばれていましたが、ここでも本命馬は期待を裏切る結果になりました。

優勝は39対10のシー・オブ・ハートブレイク Sea Of Heartbreak 。スローペースで逃げるデットーリ騎乗モデイラ Modeyra の3番手追走。フランスの長距離戦では恒例となっている直線だけのスプリント・レースとなり、最も鋭い脚を使ってミス・クリッシー Miss Crissy に半馬身差を付けました。短頭差で逃げ粘ったモデイラが3着で続き、最後方で待機した本命シャマノヴァは末脚不発で4着しんがり負け。

勝馬はロジャー・チャールトン師の管理馬、この日英国勢の初勝利となります。勝利騎手は地元フランスのオリヴィエ・ペリエ。前走ニューバリー競馬場のアーク・トライアル(GⅢ)は3着だった馬で、これまでリステッド戦が最高、パターン・レースは初勝利となります。
師によれば、馬場は固いほど能力を発揮できるタイプだそうで、カナダのE.P.テイラー・ステークスを目指す予定ですが、未だ最終決定ではありません。

そして土曜日の最後は、ナカヤマナイト Nakayama Knight も出走することで日本でも注目されたドラー賞 Prix Dollar (GⅡ、3歳上、1950メートル)。日本ではほとんどない中途半端な感じのする距離ですね。
ここは11頭が揃い、9対10の1番人気には前年の覇者シリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles が選ばれています。既にGⅠ(去年のプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス)に勝っていることから2キロ(約4ポンド)のペナルティーが課せられていますが、実力は抜けているという評価でしょう。

レースはドイツから挑戦してきたダーバン・サンダー Durban Thunder が逃げましたが、有力各馬も好位で追走する流れ。直線入口では未だダーバン・サンダーが先頭に立っていましたが、直ぐに本命シリュス・デ・ゼーグルが4番手からこれを交わして先頭に立ち、勝利をほぼ手中に・・・。
しかし勝負はここから。5番手で本命をマークしていた68対10のバイワード Byword が、ゴール前2ハロンでは前が塞がる場面もありながら最後の1ハロンで鋭く伸び、ゴール寸前でシリュス・デ・ゼーグルを短首差交わして勝利を攫いました。1馬身4分の1差離された3着にアガ・カーンのシムラーン Shimraan が食い込んでいます。
ナカヤマナイトも先行馬をマークして好位に付けていましたが、肝心の勝負所で失速、逃げてバテたダーバン・サンダーを交わしてブービーで入線するのがやっとでした。ヨーロッパ競馬の大きな壁にぶつかったのが実情でしょう。

土壇場で本命馬をうっちゃったバイワードはカーリッド・アブダッラー氏の所有、アンドレ・ファーブル厩舎所属でマクシム・グィヨン騎乗のエリート。恐らくこの後は香港遠征を予定しているハズ。
一方人気で惜敗したシリュス・デ・ゼーグル、2キロのハンデ差を考えれば実力はこちらが上。前走1マイル半の重馬場から2000メートルの良馬場への急変も多少は影響しただろうという評価。順調ならチャンピオン・ステークスに向かうでしょう。

ここまで追い付くのも結構大変ですが、土曜日はアスコットでもパターン・レースが3鞍行われています。気を取り直してもう一頑張りしましょう。

以前にイギリスの秋競馬再編成の話題を取り上げましたが、土曜日のアスコット開催もその一つ。去年までアスコットは3日間のセプテンバー・ミーティング、2日間のオクトーバー・ミーティングで平場のパターン・レースが終了していましたが、今年からは10月14・15日の二日間に「チャンピオン・ミーティング」が新設されることになりました。
そこでこれまでのセプテンバー・ミーティングを1週間前倒ししてニューマーケットに移管し、オクトーバー・ミーティングも1週間前倒ししてこの週末に2日間開催を催すことに変更されたのですね。

言わば新オクトーバー・ミーティングは金・土(9月30日と10月1日)の二日間、金曜日にはG戦は無く、土曜日の3鞍に集約されました。
金曜日の話題は、落馬事故で長期休養していたライアン・ムーア騎手の復帰(スタウト厩舎の馬に2鞍騎乗して4着・3着)でしたが、ここはG戦をレース順にレポートして行きましょう。

先ずはコーンウォリス・ステークス Cornwallis S (GⅢ、2歳、5ハロン)。去年までは1週前のアスコット・オクトーバー開催に組まれていた一戦。馬場はイギリスにも夏が戻ってきて good 。ロンドン中心部も気温が29度まで上がったそうです。

16頭が出走し、カレドニア・レディー Caledonia Lady とストーンフィールド・フライヤー Stonefield Flyer が4対1で1番人気を分け合っていましたが、夫々3・4着に敗退。
優勝は20対1の大穴ポンティー・アクレイム Ponty Acclaim が攫うところとなりました。1馬身差2着はミス・ラハール Miss Lahar 、1馬身半差3着にカレドニア・レディー。

勝ったポンティー・アクレイムはティム・イースタービー厩舎、テッド・ダーカン騎乗。前走はエア競馬場の重馬場で凡走していましたが、重の苦手な馬。馬場が良化したことが人気薄を跳ね返すことに繋がったようです。

続いてはカンパーランド・ロッジ・ステークス Cumberland Lodge S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)。去年までは同じアスコットのセプテンバー・ミーティングで行われていたレースで、これだけは開催時期が後にずれ込んだ形です。

7頭立て。何と去年のセントレジャー馬アークティック・コスモス Arctic Cosmos がクラシック以来の久々の実戦という事で注目を集めます。脚部故障から回復したもので、GⅠ馬ながら1年以上経過しているためペナルティーは無し。久々ながら9対4の1番人気に支持されていました。

注目されたアークティック・コスモスはクラシックと同じウイリアム・ビュイック騎乗での逃げ、順調に飛ばしましたが、最後はキーレン・ファロンの剛腕に御されたクエスト・フォー・ピース Quest For Peace (3対1)に2馬身交わされて2着に終わりました。3着は4馬身半の大差が付いてナントン Nanton の順。

勝ったクエスト・フォー・ピースは夏までエイダン・オブライエン厩舎にいた馬。この度ルカ・クマニ師の元に転厩して初戦での快挙となります。前厩舎から通算して3連勝、この日も残り1ハロンで末脚を決め、将来性豊かな3歳馬です。手綱を取ったファロン騎手も絶好調、久しぶりにリーディング・ジョッキー争いに加わってきました。

一方敗れたとは言えアークティック・コスモスも長期休養明けを考慮すれば復活宣言と言えましょう。順調ならカナダ・インターナショナルに向かう旨のコメントが出されました。

漸く最後に辿り着きました。ベングー・ステークス Bengough S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。コーンウォリスと同様、去年まではオクトーバー・ミーティングで行われ、アスコットで行われる最後のG戦として親しまれてきたレースです。

10頭立て。ここも1番人気(11対4)に支持されたジェンキ Genki が5着に敗退し、優勝は16対1の穴馬ロイヤル・ロック Royal Rock でした。4分の3馬身差2着がローズ・ボヌール Rose Bonheur 、同じく4分の3差で3着にデザート・ポピー Desert Poppy 。

クリス・ウォール厩舎のロイヤル・ロックは、一昨年のこのレースの勝馬で、二度目の優勝となりました(2009年はジョージ・ベイカー騎乗)。ゴール前100ヤード、パーフェクトなタイミングで抜け出したテッド・ダーカン騎手は、コーンウォリスに続くパターン戦ダブル達成です。

以上、結果を知ってから書くのは後出しジャンケンみたいで気が引けますが、土曜日に英仏で行われたパターン・レースは、全て1番人気の馬が勝てませんでした。チョッと不吉な前夜祭だったと言えるでしょうか。

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